仮想通貨投資で出た利益って、その何%かを税金として納めなきゃいけないんだよね。でも、会社が事業として仮想通貨投資をやっていた場合ってどうなの?
仮想通貨取引は個人よりも法人の方がお得?経費や税金について徹底解説!

サトシくん
カネット
つまり、法人として仮想通貨投資を行っていた場合の疑問だネ?サトシくんは大学生だから関係ないけれど、いつか関係出てくるかもしれないし見ておこうカ!
仮想通貨への投資を検討中、または投資を始めたばかりという人は、個人的な資産運用として仮想通貨を選んだものと思います。
しかし仮想通貨に関しては、まだ会計上の仕組みが取引の広がりに追い付いていません。そのため、もし予想外に多額の利益を得たとすると、税金が大きな問題となります。
この問題の解決方法に、法人として仮想通貨の取引を始めることがあげられます。
今回は、仮想通貨投資を個人と法人で行ったときの、税金や経費の違いを確認していきましょう。
目 次
そもそも個人と法人の違いとは?
社会にはさまざまな働き方がありますが、大多数は企業などの組織に所属して収入を得る、いわゆるサラリーマンか、またはお店などを経営する自営業だと思われます。職種は違ってもこうした人は、一般的には個人とみなされます。
一方の法人とは、役所に登記をすることで税法上は人と同様に扱われる組織のことです。
法人にもさまざまな種類がありますが、最も身近なのは一般的な会社でしょう。
つまり個人でも法人であっても、社会法制上は特定の人として認識されるわけです。
ではなぜわざわざ手間のかかる手続きをしてまで法人化するのかと言えば、個人と法人とでは会計上や税法上の仕組みに大きな違いがあるからです。
個人と法人に掛かる税金
仮想通貨での収入に関するテーマに進む前に、所得に係わる日本の税金制度を大まかに確認しておきましょう。
国民の3大義務の一つに数えられている納税の義務ですが、払うものは少なければ少ない程ありがたいというのが私たちの本音です。
実際に仮想通貨で収入を得られるようになると、この税制面の知識があるのと無いのとでは大違い。基礎的な税負担の仕組みについては、事前に予備知識として頭に入れておくことをおすすめします。
サラリーマンの税負担
毎月会社から給料をもらっているサラリーマンの場合、課税される税金は主に2種類あります。これらの税金は給料から天引きされてしまうため、節税対策などはほとんどできません。
所得税は所得控除などを考慮した上で、所得の額に応じて税率が変わる累進課税方式です。
参考のために、課税される所得金額に対する年間の税率を確認してみましょう。
もう1つの税金が住民税で、基本料金のように一定額の「均等割」と、基本的に所得額の10%となる「所得割」を合算して納めます。
個人事業主の税負担
個人で事業を営んでいる人の場合は、ちょっと税金の種類が増えて、所得税と住民税以外に個人事業税と消費税が掛かります。
ただし個人商店などで一定レベル以下の売り上げであれば、事業税と消費税は免除対象にもなります。
所得税と住民税は、税率や計算方法などもサラリーマンと同様と考えて良いでしょう。
個人としてあえて会社組織にせず、しかもかなり手広く事業を展開している場合でもなければ、個人事業主も税制面ではサラリーマンとほほ同じ条件だと言えます。
法人の税負担
法人に掛かる税金は非常に種類も多く複雑なので、その中の主なものだけ簡単に説明します。
税額として大きいものは、法人税・法人住民税・法人事業税・消費税などで、所得税は利益が出た場合の利子や配当金にのみ課税されます。
それ以外の税は金額的に小さいのですが、全て合計すると10種類前後が課税されることになります。
詳細な税率などはテーマから外れるため省きますが、事業規模が大きくなると、個人事業主として営業するよりも法人として活動した方が、会計上も税制上も利点が大きいと考えて良いでしょう。
カネット
仮想通貨とはちょっとテーマが離れるけど、ようは個人事業主の利益が大きい場合は、法人の枠組みになった方が色々とお得ってコト!
サトシくん
うーん。よくわかんないけれど、それほどたくさんの利益を出していない場合は、個人事業主もサラリーマンも、支払う税金はそれほど大きな違いが無いんだね
カネット
まぁ、だいたいそんな感じで覚えておいてくれたらいいヨ!じゃあ実際に課税される金額について見ていこウ!
個人として仮想通貨で成功したら!
サラリーマンと個人事業主を問わず、個人に課税される税金は所得税と住民税です。
仮想通貨の取引に関しては国税庁から指針が発表され、売却時に購入時よりも価格が上っている場合、その利益を「雑所得」として計上することになりました。
では個人で仮想通貨に投資して徐々に利益を生み出せるようになった時、その利益に課税される税金は、どのように変わるのでしょうか?
サラリーマンの負担増は?
サラリーマンの場合税金は給与から天引きされますが、もしも仮想通貨での利益が年間20万円を超えるようであれば、別に確定申告をして税金を払う必要が出てきます。
分かりやすく利益について式で表してみましょう。
(年間の利益)=(仮想通貨の売却金額)-(仮想通貨の購入金額)-(取引手数料)
サラリーマンの場合、給与としての年収と仮想通貨で得た利益(雑所得)との組み合わせによって、追加して支払う税金の額が違ってきます。
住民税は一律利益の10%なので分かりやすいのですが、所得税の方はやや計算が複雑になります。
例えば仮想通貨で同じく300万円の利益を得た場合、その人の本業での年収によって掛かってくる税金の額が違ってきます。年収が多い人の方が税率を高めに設定してあるのです。
つまりサラリーマンとしての年収が多く、仮想通貨で得た利益が多いほど、追加で支払う税金の額も多くなるという仕組みです。
所得税と住民税との合計は、利益の約15%から最大で約55%まで掛かります。これはあくまでも仮想通貨を売却した場合であって、そのまま資産として手持ちの状態にしておく場合は課税対象にはなりません。
個人事業主の負担増は?
次に個人で事業を営んでいる人の場合ですが、仮想通貨で大きな利益が出た時には、どの程度負担が増えてしまうのでしょうか?
例えば個人で何らかの小売店を経営しているとしましょう。その余暇を使って仮想通貨に投資したところが、予想外に利益が出て大喜び。これなら本業の小売店の赤字分もカバーできる、とホッとひと安心。しかし、そうは行かないのです。
このケースでは、本業で得た収入と仮想通貨で得た雑所得とは、税法上別扱いとなるため合算して節税対策をとることができません。
本業でかなりの赤字になっていたとしても、仮想通貨で得た利益はそれとは切り離して、直接課税対象になってしまうのです。
しかも雑所得扱いになると、事業所得のように損失(赤字)を繰り越したり、青色申告特別控除を受けたりすることもできません。
仮想通貨で儲かった分は全てに課税され、逆に損をした場合でもそれを事業所得に合算できないまま、何の救済制度もなく切り捨てされるしかありません。
雑所得に掛かる税率は、基本的には事業所得やサラリーマンの所得税と同じ仕組みです。仮想通貨の取引手数料は必要経費として認められますが、全体的には明らかに事業所得として計上するよりも不利な扱いになります。
個人で利益を計上するデメリット
ここまで見てきたように、本業の他に仮想通貨の投資を始め、ある程度の利益を手にすると税制上はかなり不利な扱いとなることが分かりました。
雑所得にかかる税金は、金額により約15~55%という高額なものになります。場合によっては半分以上が税金として持って行かれるという、何ともやるせない結果にもなるのです。
さらに個人事業主が注意すべきなのは、仮想通貨で利益を出した場合には、それが翌年分の健康保険税にしっかり反映されることです。
利益の額によっても違いますが、ひとくくりで言ってしまうと、その年の利益の約10%が翌年の健康保険税となって重くのしかかってきます。
こうして確認してみると、サラリーマンにしても個人事業主にしても、仮想通貨で利益を得るとそのかなりの部分を、税金として持って行かれてしまうのです。
ここでは税法上の細かい計算方法については省略したので、詳しくは国税庁のホームページなどで確認してください。
参考:国税庁
サトシくん
おぉう……個人で事業をやっている人は、雑所得以外に健康保険料の値上がりも覚悟しないといけないんだね……
モナちゃん
というか、個人事業主も仮想通貨投資の利益は雑所得としてカウントされるのね。となると、中途半端に仮想通貨投資で利益を出したら来年が大変なことになりそうだわ……
法人として仮想通貨に投資したら!
もし、継続的に仮想通貨投資で大きな利益を得られるようになった時に検討すべきなのが、法人として仮想通貨に投資をすることです。個人とは、どのような違いがあるのかを詳しく確認しましょう。
法人に掛かる主な税金の種類
個人と法人では、納めるべき税金が異なります。法人に掛かる主な税金は下記のとおりです。
・法人税 : 個人の所得税にあたるもので、法人としての所得に掛かる税金。
資本金の額や所得の額によって、15%か25.5%のうちのどちらかになる。
・法人住民税:個人の住民税とほぼ同じ内容の税金。均等割と法人割との2部構成。
法人割は法人税額に17.3%か20.7%のどちらかを掛けたもの。
・法人事業税:全ての法人が負担する税金で、税率は2.7%~5.78%。
・消費税 : 基本的に課税売上高が1000万円を超えると納税が必要になる税金。
さまざまな減免措置があり、8%の税率になることはほとんどない。
・所得税 : 営業利益が出た場合、利子や配当金に掛かる税金。
・その他の税金(地方法人特別税・印紙税・登録免許税・固定資産税・自動車税など)
この他にも経営者の役員報酬や、従業員がいればその給与にも課税されます。
一見すると個人の税に比べてはるかに種類が多く、合わせれば利益のほとんどを持って行かれそうに思えますが、実はここに法人のメリットが隠されているのです。
そのメリットが「経費」と「損金」です。
法人ならさまざまな経費が計上可能
法人化するメリットの1つめは、経営に係わるものであれば全般的に経費として計上できることです。
例えば自宅(賃貸)を事務所として登録すれば、家賃の最大で8割までを経費にできます。また仮想通貨の取引に使うパソコンや、さまざまな備品も経費として計上できます。
投資が上手く行って利益が増えるようなら、家族を役員として報酬を支払い、それを経費にできます。
つまり経費扱いの部分が増やせるため、利益を少なめに計上し、そこに掛かる税金が節約できるのです。
失敗も逆に活用できる「損金」
サラリーマンや個人事業主の場合、仮想通貨での利益は雑所得として全て課税対象となり、投資に失敗するとそのツケは全部自分に回ってきます。
しかし法人の場合は投資の儲けの中から、給与や諸経費を差し引いた分に課税されるため、相対的に個人よりも税額を低く抑えることができます。
また万が一投資で失敗してしまい赤字を出してしまった場合でも、その年の決算で生じた赤字分を、最大で9年間繰り越すことができます。つまり翌年以降が黒字になったとしても、その前の赤字分とで相殺できるのです。
さらに経費との兼ね合いで実質的に計上する利益がなければ、法人税と法人事業税は掛かりません。
他にも法人の方が個人よりも課税の減免措置が多いなど、税制面では個人よりも法人の方がかなり優遇されると考えて良いでしょう。
実際に個人と法人ではどちらが有利?
税金の正確な算出方法は、あまりにも複雑すぎて我々一般人には手に負えません。しかし大まかな計算で考えた上で、ここまで確認してきたことをまとめてみます。
まずサラリーマンの場合、仮想通貨投資での利益は本業での給料とは完全に別扱いとなります。利益がまだ少なければ、課税額もそれほど高額ではありませんが、1000万円を超えるようになると最大で約55%もの税金が重くのしかかってきます。
個人事業主の場合は、仮想通貨の利益に対して一部は経費として認められますが、本業とは切り離された雑所得扱いとなるため、実質的にはサラリーマンとほぼ同等の税額となります。
その上利益が増えると翌年の健康保険税が跳ね上がるため、実際の税負担はさらに増えます。
それに対して法人の場合は、さまざまな種類の税金が掛かるとはいえ、日本の場合法人税の「実効税率」は、現在30%弱であり今後も引き下げが予定されています。
実効税率とは、法人税・法人事業税・法人住民税を合計した、法人の実質的な負担税率のことです。
実際に仮想通貨の投資で、どのくらいの利益が上がったら法人の方が有利になるか、その損益分岐点ははっきりとした金額では表せません。
しかし利益が少ない内は個人での投資で良いかもしれませんが、ある程度の利益が見込めるようになったら、法人化した方が支払う税金は抑えられるでしょう。
モナちゃん
法人にすると『経費』が使えるから、利益にかかる税金を少なくできるってことなのね
カネット
その通リ!もちろん違法とかじゃなくて、税制の利用手段の一つだから、仮想通貨投資の利益から経費を引いても、何も問題はないヨ!
個人と法人との税額比較
ここで、個人と法人とが仮想通貨でほぼ同じ利益を得た場合、どのくらい税額に差が出るのかを確認してみましょう。
ただしかなり簡易的な計算なので、あくまでも目安と考えてください。
サラリーマンの場合の負担税額
まず個人の場合として、サラリーマンで給料としての年収が1000万円、そして仮想通貨で1年間に1000万円の利益が出たと仮定。本業と仮想通貨で合わせて2000万円の収入という設定にしてみました。
分かりやすくするために、本業の給料に関しては税額を考慮していません。
この条件で仮想通貨の利益に掛かる税金額を見てみると、早見表では一番右端の右下ですが、住民税と所得税とを併せて約417万円が納税額となります。
法人の場合の負担税額
次に同じ条件で、仮想通貨で2000万円の収入があり、そこから経費分の1000万円を差し引いて、1000万円の利益を法人として計上する場合を見てみましょう。
さまざまな種類の税金を当てはめて計算するのは、この場合非常に難しいので、ここでは前出の実効税率を使うことにしましょう。
法人税の実効税率は以下の計算式で求められます。
実効税率 ={ 法人税率 ×(1+法人住民税率)+ 法人事業税率 }÷(1+法人事業税率)
現在日本での実効税率は30%をわずかに切る程度なので、分かりやすく30%と仮定。後は利益の1000万円に30%を掛けるだけなので、大まかな納税額は約300万円となります。
非常に大ざっぱな計算になりましたが、個人の場合と法人の場合とでは、この条件でも100万円以上の開きができました。
実際には1000万円の利益をそのまま素直に計上することはなく、他にも色々と経費を上乗せして、なるべく利益を圧縮するのが法人経営の基本です。
こうして比較すると、ある程度の利益を仮想通貨の投資で得られるようになったら、法人化するメリットが大きいことがわかります。
モナちゃん
数字にしてみると、かなりの税金を節約できるのね。これはもう私も大儲けした暁には法人化した方が良さそうだわ!
カネット
ち、ちょっと待って!個人事業主が法人化する際には注意する点もあるんダ!
法人化する上での注意点
最後に仮想通貨取引を法人化する際の注意点について確認しておきます。
まず法人化には、設立費用がかかります。さらに決算処理と申告が厳しくなるため、会計事務所との契約も必要になるでしょう。
ただし、こうした費用は経費として計上できるので、長期的に見れば大きなデメリットにはならないかもしれません。
最も重要なことは、仮想通貨投資による今後の事業計画を立てられるかどうかです。投資によって安定的に、しかも継続的に一定額以上の売り上げが見込めないと、法人としての経営は難しくなります。
利益を経費で圧縮できる代わりに、利益が出なくなった場合でも法人を維持するには一定の経費が掛かるからです。
サラリーマンは勤務している会社以外に、自ら法人経営が許可されるかどうかも確かめる必要があります。
仮想通貨取引の法人化を検討している人は、メリットだけでなく、以上の点も考慮しましょう。
サトシくん
そっか。法人化した以上は、今年も来年も仮想通貨投資で利益を出し続けないと、結局メリットよりデメリットの方が大きくなるんだね……
カネット
サラリーマンみたいに勤務している場所がある人は、法人を起ち上げて良いかの確認も必要だヨ。会社によっては就業規則にNGが載ってる場合もあるカラネ!
仮想通貨取引を法人化するときは慎重に
仮想通貨投資で成功した人が、なるべく手元に利益を残しておきたいと考えるのは自然な流れです。
その一つの方法のひとつが、法人として仮想通貨への投資を事業化すること。個人よりも、法人のほうが納税額を大幅に抑えることができるからです。
しかし、
法人化は自身の投資の現状や規模、今後の展開や将来性を慎重に検討した上で行う必要があります。
ここで紹介した、個人と法人の税金の違いなどを参考に、どちらで仮想通貨取引を行うのが自分にあっているかを、しっかりと考えて臨んでください。