そういえば、世界における仮想通貨の市場規模って、どんな感じなんだろう。
ヨーロッパの仮想通貨市場の現状は?規制内容や国ごとの対応を解説!

サトシくん
カネット
世界の中でも特に市場規模が大きいのはアメリカと日本なんだケド、それらに次ぐ市場規模を持つのがヨーロッパなんダ。
ヨーロッパは、仮想通貨の主要市場の一つで、アメリカや日本などに次ぐ市場規模があります。
国によって規制の内容は異なっていますが、全体的に仮想通貨取引に寛容な国が多いのが特徴です。
中にはスイスのように、仮想通貨やブロックチェーン関連企業の誘致に積極的な「仮想通貨先進国」と呼ばれる国もあります。
しかし、アメリカや日本と同じように、仮想通貨やICO(仮想通貨を使った資金調達)に関する詐欺が発生しており、投資家保護やマネーロンダリング対策が課題です。
今回は、ヨーロッパの仮想通貨市場の現状、そして、ヨーロッパ各国の動きや出来事、規制などについて確認していきましょう。
目 次
ヨーロッパの仮想通貨市場の現状とは
まずは、ヨーロッパの仮想通貨市場の現状について見ていきます。
ヨーロッパは主要な仮想通貨市場の一つ
ヨーロッパは仮想通貨の主要市場の一つで、アメリカ、日本、韓国に次ぐ市場規模があります。
2018年5月時点では、ビットコイン取引の約3%がユーロ建てとなっており、イーサリアムなどの主要通貨も、ユーロ建ての取引が一定割合を占めています。
アメリカや日本ほどの取引規模はありませんが、ヨーロッパは早い時期から仮想通貨が普及しており、スイスは「仮想通貨先進国」と呼ばれるほどです。
また、イギリスにはビットコイン決済ができる店舗が多く、ドイツには電気やガスなどの公共料金をビットコインで支払える都市もあります。
仮想通貨への規制は国によって異なる
ヨーロッパは、ほとんどの国で仮想通貨取引が可能で、ICO(仮想通貨を使った資金調達)も禁止していません。
また、欧州連合(EU)での統一規制はなく、国によって仮想通貨やICOへの規制内容は異なっています。
仮想通貨に対して寛容な国が多いのがヨーロッパの特徴ですが、一方で、仮想通貨投資やICOに関する詐欺が社会問題化しています。
そのため、アメリカや日本と同じように、投資家保護やマネーロンダリング対策が課題になっているのです。
ヨーロッパの多くの国が、仮想通貨やブロックチェーン技術の将来性を認めており、市場の成長と両立するための規制作りに取り組んでいます。
カネット
ヨーロッパでは仮想通貨やブロックチェーンに対して前向きな考えを持ってイル。だから規制作りにも積極的なんダ。
モナちゃん
仮想通貨の決済も広がっているみたいだし、その点では日本よりも進んでいるのかもしれないね。
ヨーロッパ各国の仮想通貨に関する動きや規制
次に、ヨーロッパ各国の仮想通貨に関する動きや規制について確認していきましょう。
イギリス
引用元:コインマーケットキャップ
イギリスは、2016年6月23日に国民投票でEUからの離脱が決まりましたが、その際にビットコイン価格は上昇しました。
EUから離脱が決まったことで、国民の法定通貨への不安が広がったことが影響したと考えられます。
2018年3月には、イングランド銀行(イギリスの中央銀行)と、イギリスの金融政策当局である金融行動監督機構(FCA)で構成された、仮想通貨の専門部会を設置しました。
イギリスはEUを離脱することから、アメリカの動きにならい、アメリカ証券取引委員会(SEC)やアメリカ商品先物取引委員会(CFTC)と同じ規制措置をとることを目指しています。
そのため、この専門部会は、イギリスの仮想通貨市場の成長に重要な役割を果たすのです。
しかし、イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は「ビットコインは貨幣という役割に関しては完全に失敗している」と批判しており、その価値を認めていません。
また、ICOは許可していますが、既存の金融関連法規に従うことを望んでおり、警告も発しています。
イギリスの仮想通貨への規制が今後どうなるかは、専門部会やアメリカ政府の動きに左右されると考えられます。
ドイツ
2018年2月、ドイツ財務省は「ビットコインなどの仮想通貨について、法定通貨と同等なものとして取り扱う」と発表しました。
2015年に欧州司法裁判所が「ビットコイン取引は消費税課税対象外とする」と決定した流れをくむものです。
ドイツでは、仮想通貨と法定通貨の交換は「その他の課税対象サービス」に分類されます。
しかし、仮想通貨取引所が仲介業者として交換を行う場合や、マイニング報酬について非課税になるのです。
「法定通貨と同等なものとして取り扱う」との発表を受けて、「ドイツでは仮想通貨決済に税金がかからない」という報道もありますが、残念ながら間違いです。
非課税はあくまでも消費税の話であって、所得税の話ではありません。
一般消費者が仮想通貨で商品やサービスを購入すると利益が確定され、その利益に対して所得税が課税されるので注意が必要です。
また、ICOについては直接の規制はありません。現状では、ICO詐欺について投資家らに警告を発するにとどまっています。
フランス
2018年2月、フランス金融市場庁は仮想通貨デリバティブ取引を規制対象とし、仮想通貨デリバティブのオンライン広告も禁止すると発表しました。
デリバティブ取引とは、日本では金融派生商品とも呼ばれるもので、先物取引や差金決済取引など、少ない資金で大きな取引が可能な金融商品です。
フランスでは、仮想通貨のオンライン取引プラットフォームが、仮想通貨に連動する差金決済取引などを開始しました。
しかし、フランス政府は、2018年1月にEUで施行された、金融市場に係る包括的な新規制である「第2次金融商品市場指令(MiFID2)」の規制対象になると判断します。
そのため、仮想通貨デリバティブを提供するオンライン取引プラットフォームは、規制の枠組みに沿った運営が必要になり、広告も禁止されたのです。
また、2018年4月には、仮想通貨売却にかかる税率が、これまでの45%以上から一律19%に変更されました。
仮想通貨の売却による利益は、動産のキャピタルゲイン(資産の売買差益)だと認識することを決め、課税分類が見直されたのです。
しかし、仮想通貨のマイニング報酬は除外されており、従来通りの税率が適用されます。
フランスでは、仮想通貨を規制するためのチームが結成されており、仮想通貨の適切な枠組みを作ることで、フランス経済や国民生活に対する、仮想通貨の負の影響を抑制したい考えを持っています。
ブロックチェーン技術の可能性や将来性を見込んでおり、ICOを含めて適切な枠組みを作成していく方針です。
スイス
スイスは仮想通貨先進国です。ツーク州はスイスの「クリプトバレー」と言われており、仮想通貨やブロックチェーン関連企業が多く存在しています。
ツークにはイーサリアム財団の本部があり、住民登録手数料がビットコインで支払えるほど、仮想通貨が受け入れられているのです。
また、2018年1月から、イタリアとの国境の町キアッソで、ビットコイン納税が可能になりました。キアッソは、仮想通貨関連企業の誘致も行っています。
2018年2月には、スイス金融市場監査局(FINMA)が、既存の金融市場規制法をICOの規制に適用するためのガイドラインを発表しました。
今後ICOに法律を適用するかを決定するために、ICOで発行されるトークンを「決済トークン」「ユーティリティトークン」「資産トークン」の3つに分類します。
スイス政府は、ICO市場の可能性を認識しており、ブロックチェーン技術への将来性にも期待しています。
ICOについてのガイドラインを策定することで、企業は規制の枠組みに沿う形でICOを実施できるメリットがあるのです。
最近では、日本で転職サイト「キャリコネ」などを運営するグローバルウェイが、スイスで現地法人を設立し、スイス金融市場調査局へのICOの実施の認可申請を行うと発表しています。
ロシア
ロシアでは、2018年3月にロシアの議員グループが、仮想通貨とICOに対して規制の枠組みを設ける法案を提出しました。
仮想通貨やトークンをデジタル金融資産として定義し、国内の仮想通貨取引所のみで取引可能とする内容です。
また、マネーロンダリング防止、テロ資金対策に関する規制に従うことを、取引所の顧客口座に要求することも含まれています。
今回の法案について、ロシアのプーチン大統領は、ロシア国内の仮想通貨規制を2018年7月までに法制化すると言及したとの報道もあります。
また、ICOについては、ロシア中央銀行は違法にしたい考えを示しているものの、政府は規制化を望んでいます。
さらに、ロシアでは、政府発行の仮想通貨「クリプトルーブル」を法定通貨にするための法案が提出されています。
ロシア中央銀行や財務省は、「クリプトルーブル」の発行を急ぐことはないとしていますが、プーチン大統領はクリプトルーブルの必要性を説いています。
ウクライナ問題を巡るアメリカ、EUの対ロシア経済政策への対策や、国際送金のコスト削減により、ロシアへの投資資金の流入が期待できることが背景にあるようです。
クリプトルーブルは完全に政府の管理下になるため、他の仮想通貨の取り扱いがどうなるかが注目されます。クリプトルーブル以外の通貨は、すべて禁止されるとの報道もあります。
モナちゃん
ヨーロッパ各国でそれぞれ仮想通貨に対する考えや規制は多少違うとはいえ、どの国も前向きな取引をしているわね。
カネット
特にロシアは仮想通貨を法定通貨にするというかなり前衛的な取り組みも進められているヨ。
ヨーロッパの仮想通貨を巡る主なできごと
続いて、ヨーロッパの仮想通貨を巡る主なできごとについてお伝えします。
バイナンスがマルタへ本拠地を移転
2018年3月、世界有数の取引規模を誇る仮想通貨取引所バイナンス(Binance)が、マルタ共和国への移転を発表し、投資家の注目を集めました。
2018年2月に、中国が国内の仮想通貨関連企業をすべて締め出す規制を発表したことで、バイナンスも影響を受け、新しい本拠地を探していたのです。
マルタは小さな島国で、EUの一員です。
仮想通貨に寛容な国で、ブロックチェーン技術の規制枠組み作りに取り組んでおり、ブロックチェーンの拠点になることを目指しています。
バイナンスは法定通貨との交換ができないため、利用者は米ドルとレートが固定されている仮想通貨テザー(USTD)を使い、仮想通貨の激しい価格変動(ボラティリティ)から身を守っています。
そのため、バイナンスは法定通貨と仮想通貨の預金・引き出しサービスを目指しているのです。
マルタ政府は分散型台帳の法的枠組みを策定し、仮想通貨業界に正式な規制を導入する法案の手続きを進めています。
大手仮想通貨取引所のOKExも、マルタに拠点を設置すると発表しており、ブロックチェーン企業の成長によって多くの雇用創出を目指す考えです。
イタリアの取引所ビットグレイルでハッキング被害
2018年2月9日、イタリアの仮想通貨取引所ビットグレイル(BitGrail)で、1700万ナノ(Nano)がハッキングにより不正流出する事件が発生しました。
被害額は、当時のレートで約200億円です。
仮想通貨取引所のハッキング被害額の中でも大きな事件の一つで、一時的な資産の引き出しや預金の停止などが発表されました。
2018年3月には、ビットグレイルは被害者への返金を約束しています。
救済条件は訴訟を起こさないことで、新たに作成したトークン発行により損失の80%、残り20%をナノでカバーすることを提案しました。
ビットグレイルのオーナーであるフィラノ氏は、「欠陥は取引所ではなく、ナノのプロトコルにあった」と主張しています。
一方、ナノ側は「ビットグレイルのソフトウエア管理に問題あった」と主張しており、お互いの関係は悪化しています。
その後、2018年4月に、イタリアの裁判所に取引所の破産申立てを行いました。
ビットフライヤーがヨーロッパ進出
2018年1月23日、日本国内最大の仮想通貨取引所ビットフライヤーは、EU各国でサービスを開始したと発表しました。
ビットフライヤー子会社の「 bitFlyer EUROPE S.A.」が、ルクセンブルクで「Payment Institution License」を取得し、仮想通貨交換業を開始します。
ビットフライヤーにとっては、2017年11月にアメリカでの事業開始に次ぐ海外進出案件です。
ビットフライヤーは日本、アメリカ、EUにおいて仮想通貨交換業のライセンスを取得した初めての事業者となりました。
まずはビットコイン/ユーロの通貨ペアを提供し、2018年中にライトコイン、イーサリアム、イーサリアムクラシック、ビットコインキャッシュなどの取り扱いを目指すと発表しています。
ビットフライヤーがEUに進出したことからも、ヨーロッパが重要な仮想通貨市場であることがわかります。
サトシくん
ビットフライヤーはヨーロッパにまで進出しているんだ!
カネット
仮想通貨取引所の整備や規制もどんどん進められているヨ。
モナちゃん
日本の取引所がヨーロッパやアメリカに進出しているなんて、誇らしいわね。
ヨーロッパが仮想通貨市場全体に与える影響
ここでは、ヨーロッパが仮想通貨市場全体に与える影響について確認していきましょう。
ヨーロッパ各国単独の規制の影響は軽微
現在、ヨーロッパでは、国によって仮想通貨やICOへの規制内容は異なります。
また、ビットコインやイーサリアム、リップルなどの主要通貨の取引において、ユーロが占める割合は大きくありません。
そのため、各国が単独で仮想通貨への規制を強化しても、仮想通貨市場全体に与える影響は軽微だと考えられます。
ヨーロッパは仮想通貨取引について寛容な国が多く、仮想通貨やブロックチェーン技術の将来性を認めています。
現時点では、中国のように、仮想通貨取引やICOの禁止を発表する国が出てくる可能性は少ないでしょう。
欧州連合(EU)での統一規制は大きな影響を与える
現在は、国によって仮想通貨への規制内容は異なっていますが、EU全体で仮想通貨やICOへの統一規制ができれば、仮想通貨市場全体に大きな影響を与える可能性があります。
EUで統一規制ができ、ヨーロッパで仮想通貨取引に参加する人が増えると、ユーロ建ての取引割合も増えて、市場への影響力が大きくなるかもしれません。
ICOは仮想通貨先進国であるスイスなど、ヨーロッパで行われることが多いため、ICOの市場正常化への期待もかかります。
そのため、日本で仮想通貨取引をするときも、ヨーロッパの動きに注目することが大切です。
今後市場に影響を与える可能性があること
最後に、ヨーロッパにおいて、今後仮想通貨市場に影響を与える可能性があることについてお伝えします。
仮想通貨への革新的な取り組みや関連企業の誘致
ヨーロッパには、スイスやマルタ共和国など、仮想通貨やブロックチェーン企業の誘致に積極的な国があります。
また、仮想通貨による納税や行政手数料の支払いなど、仮想通貨の活用は、日本やアメリカよりも進んでいるのです。
そのため、今後もヨーロッパから、仮想通貨の新たな活用方法や、誘致に積極的な国や地域が増えてくるかもしれません。
仮想通貨取引所バイナンスのような、大きな取引規模をもつ取引所や企業を誘致できれば、仮想通貨市場に与える影響は大きいでしょう。
欧州連合(EU)での統一規制
ヨーロッパ各国で規制が異なる状態が改められ、EU全体で統一規制ができると、取引所や企業はその枠組みに沿って、取引所運営やICOができるようになります。
投資家保護やマネーロンダリング対策の観点からも、EU統一の枠組みが必要だと考える首脳は多くいます。
イギリスのEU離脱や、ロシアの規制強化などの課題はあるものの、EUで統一規制ができ、その内容が仮想通貨市場やブロックチェーン技術の発展を妨げるものでなければ、ヨーロッパの存在感は大きくなるでしょう。
EU全体での統一規制の枠組み作りは、ドイツやフランスが中心になると考えられるため、どのような動きをするかに注目する必要があります。
サトシくん
スイスをはじめ、ロシアやドイツの仮想通貨に対する動向には目が離せないね!
カネット
世界の動きが仮想通貨の価格にも影響するからネ。国内だけでなく、世界の動向はこまめにチェックしよウ!
ヨーロッパの仮想通貨市場の現状や取り組みを理解して、仮想通貨取引をしよう!
アメリカや日本ほど市場は大きくないものの、ヨーロッパでは早くから仮想通貨が普及しており、スイスは仮想通貨先進国とも呼ばれるほどです。
現在は国によって、仮想通貨やICOへの規制内容が異なっていますが、各国の首脳はEU全体での統一規制の必要性を認識しています。
仮想通貨やブロックチェーン関連企業の誘致に積極的な国もあり、EU全体で統一規制ができれば、仮想通貨市場におけるヨーロッパの存在感は高まるはずです。
仮想通貨価格に影響を与える可能性もあるため、ヨーロッパの仮想通貨市場の現状や取り組みを理解して、仮想通貨の取引をしましょう。